無機過酸化物

無機過酸化物とは、過酸化水素(H₂O₂)の2個の水素イオン(H⁺)が金属イオンで置き換えられた化合物の総称です。
過酸化物とは、分子内に-O-O-結合を有する酸化物のことで、通常の酸化物より酸素原子が1つ多く結合しており、不安定です。
そのため、加熱により無機酸化物と酸素に分解します。
また、酸との反応で、過酸化水素を遊離するため、分解して酸素を発生します。
無機過酸化物に属する主な危険物には、アルカリ金属の過酸化物である過酸化カリウムと過酸化ナトリウム、アルカリ土類金属の過酸化物である過酸化カルシウムや過酸化マグネシウム、過酸化バリウムがあります。
過酸化カリウム(K₂O₂) | |
性 質 | ◆オレンジ色の粉末、比重2.0。 ◆融点の490℃に加熱すると、酸化カリウムK₂Oと酸素に分解する。 ◆水と反応すると発熱し、水酸化カリウムKOHと酸素に分解する。 ◆吸湿性が強く、潮解性を有する。 |
危険性 | ◆水との反応で大量に発熱すると、爆発することがある。 ◆有機物・可燃物と混在すると、加熱・衝撃により発火・爆発することがある。 ◆皮層や粘膜をおかす。 |
貯蔵・保管 | ◆容器は密栓して水分の侵入を防ぐ。 ◆有機物・可燃物から隔離する。 ◆加熱・衝撃を避ける。 |
消火方法 | ◆注水は避け、乾燥砂をかけるなどして窒息消火する。 |
過酸化ナトリウム(Na₂O₂) | |
性 質 | ◆白色またほ黄白色の粉末、比重2.9。 ◆約660℃に加熱すると、分解して酸素を発生する。 ◆水と反応すると発熱し、水酸化ナトリウムNaOHと酸素に分解する。 また、酸と反応すると、過酸化水素H₂O₂を生じる。 ◆吸湿性が強い。 ◆二酸化炭素と反応して、炭酸ナトリウムNa₂CO₃と酸素を生じる。 ◆融解したものは白金Ptを侵すため、ニッケル、金、銀のるつぼを使う。 |
危険性 | ◆過酸化カリウムとほぼ同じ。 |
貯蔵・保管 | ◆過酸化カリウムとほぼ同じ。 |
消火方法 | ◆注水は避け、乾燥砂をかけるなどして窒息消火する。 |
過酸化カルシウム(CaO₂) | |
性 質 | ◆無色または白色の粉末。 ◆エタノール、エーテルには溶けない。 ◆約275℃に加熱すると、爆発的に分解して酸素を発生する。 ◆水にはわずかに溶け、分解して酸素が発生する。 |
危険性 | ◆加熱すると、爆発的に分解することがある。 ◆酸には溶け、過酸化水素H₂O₂を発生する。 |
貯蔵・保管 | ◆容器は密栓する。◆酸との接触を避ける。◆加熱を避ける。 |
消火方法 | ◆注水は避け、乾燥砂をかけるなどして窒息消火する。 |
過酸化マグネシウム(MgO₂) | |
性 質 | ◆白色の粉末、比重3.0。 ◆加熱すると、酸化マグネシウムMgOと酸素に分解する。 ◆水には不溶であるが、水と反応して酸素を発生する。 また、希酸に溶けて過酸化水素を発生する。 |
危険性 | ◆水との接触を避ける。 ◆有機物・可燃物と混合すると、加熱・摩擦で爆発の危険がある。 |
貯蔵・保管 | ◆容器は密栓する。◆酸との接触を避ける。◆加熱・摩擦を避ける。 |
消火方法 | ◆注水は避け、乾燥砂をかけるなどして窒息消火する。 |
過酸化パリウム(BaO₂) | |
性 質 | ◆灰白色の粉末。 ◆加熱すると、酸化バリウムBaOと酸素に分解する。 ◆水には不溶であるが、熱水と反応して酸素を発生する。 また、酸に溶けて過酸化水素を発生する。 |
危険性 | ◆水との接触を避ける。 ◆酸化されやすいものと混合すると、爆発の危険がある。 ◆人体に有毒。 |
貯蔵・保管 | ◆容器は密栓する。◆酸との接触を避ける。◆加熱・摩擦を避ける。 |
消火方法 | ◆注水は避け、乾燥砂をかけるなどして窒息消火する。 |
性状ポイント
●アルカリ金属の過酸化物は、水と反応して熱と酸素を発生する。
●アルカリ土類金属の過酸化物は、酸に溶けて過酸化水素を発生する。
●過酸化カリウムと過酸化ナトリウムは、吸湿性が強い。
●過酸化バリウムは、アルカリ土類金属の過酸化物の中で最も安定である。
●アルカリ金属の過酸化物は、水と反応して熱と酸素を発生する。
●アルカリ土類金属の過酸化物は、酸に溶けて過酸化水素を発生する。
●過酸化カリウムと過酸化ナトリウムは、吸湿性が強い。
●過酸化バリウムは、アルカリ土類金属の過酸化物の中で最も安定である。
貯蔵・消火ポイント
●アルカリ金属の過酸化物は、乾燥状態で保管する。
●アルカリ土類金属の過酸化物は、酸と接触させない。
●消火には、炭酸水素塩類等の粉末消火剤やソーダ灰、乾燥砂等を用いる。
●水系消火剤は使用できない。
●アルカリ金属の過酸化物は、乾燥状態で保管する。
●アルカリ土類金属の過酸化物は、酸と接触させない。
●消火には、炭酸水素塩類等の粉末消火剤やソーダ灰、乾燥砂等を用いる。
●水系消火剤は使用できない。