黄リン

危険物の性質と火災予防・消化方法 - 第3類(自然発火性物質及び禁水性物質)
黄リン

黄リンは、リン鉱石、コークス、ケイ石などからつくられ、赤リンやリン化合物の原料になります。
第3類の中で、自然発火性のみを有する物質です。
色また淡黄色のロウ状の固体で、ニラに似た不快臭があります。
には溶けませんが、ベンゼン二硫化炭素には溶けます。
濃硝酸と反応してリン酸(H₃PO₄)を生じ、強アルカリ溶液と反応して有毒で可燃性のリン化水素(PH₃)を生じます。
リン化水素は、無色の有毒な可燃性ガスで悪臭があり、ホスフィンとも呼ばれます。

黄リンは、非常に酸化されやすく、空気中に放置すると、酸化熱により白煙を生じながら激しく燃焼し(自然発火)、有毒で腐食性のある十酸化四リン(五酸化二リン:P₄O₁₀)になります。
暗所で酸化されると青白色の燐光を発します。
猛毒性があり、皮膚に付着すると、やけどをすることがあり、経口摂取すると0.05gで死亡します。

貯蔵にあたっては、空気に触れないよう水中で貯蔵します。
石油系の有機溶剤は水より酸素を多く溶解するため、黄リンの保護液としては使用できません。
また、30~44℃の発火点で自然発火するため、貯蔵の際は、他の物質と完全に隔離する必要があります。
消火方法を考慮すると、同じ第3類であつても黄リンと禁水性物質は同一の場所に貯蔵しないようにします。

消火にあたっては、水、強化液、泡などの水系消火剤が最も有効ですが、棒状注水や高圧注水は、流動している黄リンを飛散させ、被害が拡大するおそれがあるため、使用は避けます。
ほかに、乾燥砂等も効果があります。黄リンはハロゲン化物と反応して有毒ガスを発生するため、ハロゲン化物消火剤は使用できません。
また、黄リンは融点が低く、燃焼によって溶解するため、土砂で流動を防ぎます。

黄リン(P₄)
性 質 ◆白色~淡黄色のロウ状で、ニラに似た不快臭がする。
◆比重1.8~2.3。融点44℃ ◆発火点34~44℃
◆水に溶けないが、ベンゼンC₆H₆や二硫化炭素CS₂などの有機溶媒によく溶ける
◆極めて反応性が強く、微粉状のものは34℃で、固形状のものほ60℃(水蒸気飽和空気中では30℃)で自然発火して、暗所ではリン光を発する。
◆燃焼すると十酸化四リン(五酸化二リン)を生成する。十酸化四リンは、昇華性のある無色の固体で、生成時に白煙を生じる。
 P₄ + 5O₂ → P₄O₁₀
濃硝酸と反応してリン酸を生じる。
 P + 3HNO₃ → H₃PO₄ + 2NO₂ + NO
強アルカリ溶液と反応して、リン化水素(ホスフィン)を発生する。
 P₄ + 4OH⁻ + 2H₂O → 2HPO₃²⁻ + 2PH₃
危険性 ◆極めて危険な猛毒物質。あらゆる接触を避ける。
◆赤リン(第2類危険物)より反応性は極めて大きく、危険である。
◆粉じんは点火により爆発する。
貯蔵・保管 ◆空気と接触しないように、水中(保護液)で貯蔵する。
酸化剤ハロゲン・硫黄・強塩基と隔離する。
消火方法 ◆噴霧注水または湿った砂で消火する。
ハロゲン化物消火剤は、反応して有毒ガスを発生するため、使用できない。

 

性状ポイント

●水、アルコールには溶けないが、二硫化炭素には溶ける。
●濃硝酸と反応してリン酸を生じる。
●空気中で自然発火し、十酸化四リンになる。
●強アルカリ溶液と反応してリン化水素を生じる。
貯蔵・消火ポイント

空気に触れないよう水中に貯蔵する。
酸化剤やハロゲン元素を近づけない。
消火には、水系消火器または乾燥砂等を用いる。
二酸化炭素消火剤、ハロゲン化物消火剤は使用できない。

 

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