硝酸エステル類【第1種自己反応性物質 指定数量10kg】

硝酸エステル類とは、硝酸HNO3の水素原子Hがアルキル基CnH2n+1で置き換えられた化合物の総称です。

硝酸エステル類は、酸である硝酸(H-O-NO2)とアルコール(CnH2n+1O-H)からできるエステル(CnH2n+1O-NO2)なので、カセイソーダ(水酸化ナトリウム)で分解できます。

硝酸エステル類は、自然分解して一酸化窒素NOを発生し、この一酸化窒素が触媒となって、自然発火します。

硝酸エステル類に属する主な物質には、硝酸メチル、硝酸エチル、ニトログリセリン、ニトロセルロースがあります。

硝酸メチル【CH3NO3】
無色透明の液体、比重1.22、沸点66℃、引火点15℃、蒸気比重2.65、水にはほとんど溶けないが、有機溶剤(アルコール、ジエチルエーテル)には溶ける。
メタノール(メチルアルコール)と硝酸の反応で得られる物質。引火性を有する液体で、甘味と芳香がある。火気を近づけない。直射日光、加熱、摩擦、衝撃を避ける。容器は密栓し、通風をよくして冷暗所に貯蔵する。酸素を含有しているため、いったん着火すると消火は困難である。

硝酸エチル【C2H5NO3】
無色透明の液体、比重1.11、沸点87.2℃、引火点10℃、蒸気比重3.14、水にはわずかに溶け、有機溶剤(アルコール)に溶ける。甘味と芳香がある。
引火性を有する液体で、甘味と芳香がある。消火方法は、硝酸メチルに準じる。

硝酸メチル・硝酸エチルの特性
硝酸メチル・硝酸エチルには、甘味と芳香がある。
硝酸メチルは水に溶けないが、硝酸エチルは水にはわずかに溶ける
硝酸メチル・硝酸エチルは、着火後の消火は困難

ニトログリセリン【C3H5(ONO2)3】
無色の油状液体、比重1.6、沸点160℃、融点13℃、蒸気比重7.84、水にはほとんど溶けないが、有機溶剤には溶ける。甘味があり、有毒である。8℃で凍結する。
凍結すると爆発の危険性がある。
貯蔵・取り扱いにあたっては、床にこぼれたり、周囲のものを汚染した場合は、カセイソーダのアルコール溶液を注いで、布などで拭き取る。
爆発的な燃焼が生じると、消火は困難である。
また、物質名に「ニトロ」がついているが、通常ニトロ化合物はニトロ基-NO2が炭素に結合している化合物をいう。
したがって、ニトログリセリンやニトロセルロースは、硝酸エステル類であり、ニトロ化合物ではない。
ちなみに、第4類の危険物の第3石油類に属するニトロベンゼンC6H5NO2は、ニトロ化合物だが、ニトロ基が1つしかなく、自己反応性が低いため可燃性の第4類の危険物に分類されている。
ニトログリセリンに、硝化度12%程度のニトロセルロースを溶かし、ゼラチン状にしたものがダイナマイトである。

ニトログリセリンは、甘味があり有毒
ニトログリセリンは、水には溶けず、有機溶剤に溶ける
ニトログリセリンは、凍結でも爆発


ニトログリセリンの用途
ニトログリセリンは、加熱や衝撃、摩擦によって猛烈に爆発するため、爆薬としてダイナマイトの原料に使用されています。
また一方では、わずかな量ならば血管拡張作用があるため狭心症治療薬としても使われており、一般に「ニトロ」と言った場合は、このニトログリセリンまたはこれを含有する狭心症剤を指しています。
ニトログリセリンを使用してダイナマイトを生み出したのは、アルフレッド・ノーベルであることは有名ですが、狭心症治療への活用を発表したのは、アメリカのコンスタンチン・ヘリングという研究者です。
しかし、ヘリンクの報告に対し反論した人たちは、ヘリングがニトログリセリンを舌の下に置く方法(舌下投与法)を行ったのに対し、飲み込んでしまっていたため効果がわからなかった、といわれています。
ニトログリセリンは、飲み込んでしまうとほとんど効果が出ません。そのため今でも、ニトログリセリンの錠剤は、舌の下にある血管から直接吸収されるよう、舌下投与されます。

ニトロセルロース【別名:硝化綿】
原料である綿や紙と同じ形状、可燃性固体。比重約1.7、発火点160℃、無味・無臭の可燃性固体。有機溶剤(酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン)など によく溶けるが、水には溶けない。
自然分解しやすく、不純物として酸が残っている場合は直射日光や加熱で自然発火することもある。
貯蔵・取り扱いにあたっては、乾燥すると自然分解しやすいため、エタノールまたは水で湿綿として、冷暗所に貯蔵する。
消火にあたっては、注水により、分解温度以下に下げて冷却消火を行う。窒息消火はほとんど効果がない。

硝化綿ともいい、セルロースを硝酸と硫酸の混合溶液に浸してつくったものである。
浸漬時間によって、硝化度(窒素含有量)の異なるニトロセルロースが得られ、この窒素含有量が多いほど、爆発の危険性が高くなる。
窒素含有量によって、主に下記の3つのニトロセルロースがある。

強硝化綿  窒素含有量12.8%を超えるもの
ピロ硝化綿 窒素含有量12.5~12.8%のもの
弱硝化綿  窒素含有量12.5%未満のもの

弱硝化綿をジエチルエーテルとエタノール(エチルアルコール)の混合液(2:1)に溶かしたものをコロジオンといい、ラッカーなどの原料に使われている。
また、溶剤が蒸発して薄い膜ができるため、傷口の被膜などにも使われる。

ニトロセルロースと樟のうを混ぜてつくられたのが、セルロイドである。
試験にはセルロイドの問題も出題されることがあるが、ニトロセルロースと同じ特性を有する物質と見なして解答すればよい。

ニトロセルロースは、無味・無臭で、硝化綿ともいう
ニトロセルロースは、水には溶けない
ニトロセルロースは、直射日光・加熱で自然発火


セルロイド
セルロイドは、世界で初めてつくられた合成樹脂です。
1860年代に、ビリヤードボールの製造業者が「象牙のかわりとなる原料の発明」に賞金をかけました。
これに挑戦したアメリカのハイアット兄弟が、セルロイドの合成に成功して賞金を獲得、セルロイド製造会社を設立するまでに至りました。
かつては文房具やおもちゃなどの原料として盛んに生産され、映画はセルロイドをベースとしたフイルムで記録されていました。
アニメーション製作で使われる「セル画」の名称は、当初セルロイドのシートを使用していたことに由来します。
ただ発火しやすく危険性が高いため、時代が下り、すぐれた新しい合成樹脂が開発されていくにつれ、セルロイドの生産も減少し、現在ではほとんど使用されていません。

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