金属の水素化物

危険物の性質と火災予防・消化方法 - 第3類(自然発火性物質及び禁水性物質)
金属の水素化物

水素化物とは、水素と他の元素との二元化合物のことです。
メタン(CH₄)やアンモニア(NH₃)のような分子状化合物と、ここで扱う金属の水素化物に分けられます。
金属の水素化物は、元の金属と似た性質をもっています。水素原子が水素イオン(H⁺)ではなく、水素化物イオン(H⁻)の状態になっているため還元性が強く、水と激しく反応して発熱し、水素を発生して水酸化物になります。
また、金属の水素化物に属する水素化ナトリウム水素化リチウムは、塩類似水素化物と呼ばれ、塩が油に溶けないように有機溶媒には溶けません。

水素化ナトリウム NaH
性 質 灰色(市販品)の結晶で、比重1.4。
◆高温にすると、ナトリウムと水素に分解する。
◆ベンゼンC₆H₆や二硫化炭素CS₂に溶けない。
水と激しく反応して、水素を発生する。
 NaH + H₂O → NaOH + H₂
◆還元性が強く、金属酸化物や有機化合物を還元する。
危険性 ◆室温で乾いた空気中では安定であるが、湿つた空気中では自然発火する。
貯蔵・保管 ◆酸化剤及び水分と接触させない。
窒素を封人した容器に密閉する。または、鉱油中に分散させて密閉する。
消火方法 ◆乾燥砂、消石灰(水酸化カルシウム)、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、金属火災用粉未消火剤(塩化ナトリウム)を用いて消火する。
◆水系の消火剤(水・強化液・泡)は、使用してはならない。激しく反応して水素を発生する。

 

水素化リチウム LiH
性 質 ◆灰色(市販品)の結晶、または透明のガラス状固体。比重0.8
◆高温にすると、リチウムと水素に分解する。
◆室温で乾いた空気中では安定である。
◆一般に、溶媒にはほとんど溶けない。
水と激しく反応して、水素を発生する。
 LiH + H₂O → LiOH + H₂
◆還元剤として使われる。
危険性 ◆加水分解により大量の水素を放出する。
貯蔵・保管 ◆酸化剤及び水分と接触させない。
◆窒素を封入した容器に密閉する。
消火方法 ◆乾燥砂などを用いて消火する。
◆水系の消火剤(水・強化液・泡)は、使用してはならない。激しく反応して水素を発生する。

 

性状ポイント

●金属の水素化物は、強い還元性を有する。
●金属の水素化物は、有機溶剤に溶けない。
●金属の水素化物は、水と反応して水素を発生する。
●金属の水素化物は、高温で分解して水素を発生する。
貯蔵・消火ポイント

不活性ガスを封入、または鉱物油中で貯蔵する。
消火には、乾燥砂等、消石灰、ソーダ灰を用いる。
水系、二酸化炭素、ハロゲン化物の消火剤は使用できない。

 

関連記事